今回は、日本酒で質問されることが多いので、少し解説的なものを書きます。
日本酒を美味しく選ぶ為のヒントになれば嬉しいです。
日本酒が飲める居酒屋で
『純米(じゅんまい)』
『吟醸(ぎんじょう)』
『大吟醸(だいぎんじょう)』
『本醸造(ほんじょうぞう)』
と言った単語を聞くこともあるでしょうし、
瓶のラベルや裏ラベルに表記してあります。
「やっぱり純米酒だよね」
「大吟醸って飲みやすい」
とおっしゃる方もいらっしゃいます。
今回は、この分類の簡単な説明と、個人的な見解を述べたいと思います。
精米について
まず、小学校の時に習ったように、
お米は「胚芽」「胚乳」「ぬか層」などの構造があります。
籾米を精米すると白米になります。
(出典:美味しいお米の理由 - こめひこ)
通常の食用のお米だと、
「白米が甘くて美味しい」
「玄米や胚芽米の方が栄養があって旨い」
など、精米の具合によって味わいも変わります。
食用だと精米しても90%程度を残します。
日本酒は基本的には「胚乳」、つまり『心白(しんぱく)』を使うことがほとんどです。
ラベルに書いてある『精米歩合(せいまいぶあい)』とは
元のお米に対する、精米した後に残った心白のパーセンテージを表しています。
(出典:お米を削る理由 | Les grands sakés de Hiroshima)
精米して、磨いていくほど、
表面のタンパク質の部分はなくなってゆき、
心白だけ残り、デンプン質だけになります。
タンパク質は日本酒の旨味(アミノ酸)になるのですが、
多すぎると雑味になって、嫌われる味になることがあります。
逆に、タンパク質を極力少なくしてゆくと、
アルコールを作る酵母が飢餓状態になり、
日本酒特有の『吟醸香(ぎんじょうか)』が出やすくなります。
フルーティー、マスカットのような、バナナのようなと表現される香りです。
雑味が減るのですっきり飲みやすくなります。
ただし、醸造過程では、割れやすく、取り扱いに慎重になる必要もあります。
削った部分は廃棄せず、糠や飼料、パンや米焼酎の原料など、活用されています。
これは傾向であって、日本酒の製造過程によっても様々に変わりますが、
ラベルの読み方の指針になります。
精米歩合による分類は最後に述べます。
純米酒と本醸造酒
また、お米だけで作れば『純米酒』と呼ばれます。
『醸造アルコール』と呼ばれるアルコール度数95%以上のエタノール(エチルアルコール)を
加えたお酒が『本醸造酒』です。
大半がサトウキビを発酵させて、蒸留した焼酎です。
誤解してる方も多いですが、醸造アルコールは「無味無臭」です。
元の日本酒に対して、3%程度加えるの一般的です。
利点はいくつかありますが、
一つは「香りが引立つ」ことです。
香り成分は水よりもアルコールに溶けやすいので、
『本醸造酒』の方が『吟醸香』を強く感じやすいです。
もう一つは、雑味が少ないのですっきり飲める「味の切れ」が出てきます。
よく「本醸造酒」は悪酔いすると言う方がいますが、
肝臓にとってアルコールに区別はないので、それはありません。
むしろすっきりとした味で飲み過ぎたのかもしれませんし、体調不良が原因でしょう。
日本酒の分類
これを知っておくと、メニューから日本酒を選ぶ時に、ちょっとした目安になります。
(出典:【公式】別邸 福の花 浜松町|知っているようで意外と知らない、精米歩合の話)
『精米歩合』は酒税法で、70%、60%、50%の基準で分かれます。
純米酒
まず、精米歩合に関係なく、お米だけで作ったお酒が
『純米酒』
です。これは分かりやすいですよね。
そして、精米していて60%以下まで磨いてゆくと、
『純米吟醸酒』
と呼ばれます。
「吟醸」と付くので一般的に「吟醸香」が強くなります。
さらに精米して50%以下に磨くと
『純米大吟醸酒』
と呼ばれます。
「吟醸香」は更に強くなる傾向があります。
雑味がなくなり、すっきりとした飲み口のものが多いです。
お米の日本酒として使わない部分が増えるので、当然高価になります。
ここで、ラベル表示で初心者が混乱する場合があります。
58%まで磨いているのに「純米酒」
49%まで磨いているのに「純米吟醸酒」
と表記している蔵もあります。
上図の右側を名乗る為には基準をクリアする必要がありますが、
製造蔵の考えで、名乗らなくてもいいのです。
ラベルを見るポイントしては『精米歩合』までチェックすると、
日本酒選びの参考になります。
「純米酒と書いてあるけど、純米吟醸酒クラスじゃないか」
と気づけたり。
本醸造酒
精米歩合が70%以下で、若干(一般的に3%程度)醸造アルコールを添加したお酒が
『本醸造酒』
です。
そして、精米していて60%以下まで磨いてゆくと、
『吟醸酒』
と呼ばれます。お米だけではないので「純米」が付きません。
さらに精米して50%以下に磨くと
『大吟醸酒』
と呼ばれます。
品評会に出店するお酒には、純米ではない『大吟醸酒』を出す蔵がありますが、
『吟醸香』をより楽しんで欲しいからです。
特別純米酒と特別本醸造酒
精米歩合 60% 以下、または 特別な醸造方法で造った酒には
『特別』
が付きます。
醸造方法はラベルに書く必要があるのですが、
普通の醸造方法を知らないと、意味が分からない場合が多いでしょう。
まずは、「特別に美味しいのかもしれない」と言うイメージで大丈夫です。
普通酒
上記の基準に入らないものを
『普通酒』
と呼ばれます。
一般的に安価になるので、スーパーやコンビニで、
パックやワンカップで売ってたりします。
だからと言って、馬鹿にするものでもありません。
製造蔵が地元向けに安価だけれど、
質の良い、美味しいお酒を出しているところもあります。
旅行先で、安くて美味しいお酒に出会った時は本当に嬉しくなります。
個人的な見解
「吟醸」「大吟醸」と付いた方が、
高価ですし、吟醸香がして、すっきりと飲みやすくなります。
ただし、吟醸香が強すぎる大吟醸は、
乾杯酒だったり、日本酒バーで単独でゆっくり味わう時にはいいのですが、
刺身や出汁の味を邪魔するなと感じることもあります。
安価な純米酒や本醸造酒の方が、
和食と合うなと感じることもありますし、
肉料理などしっかりした味には、
あまり磨いていない日本酒の米の旨味がぴったりの時もあります。
最近は精米歩合が90%以上の日本酒も人気が出てきています。
複雑な味が混ざり合って楽しく、
作り手の思いもチャレンジしてるんだと感じます。
以前は「純米酒じゃないといけない」となんとなく思っていましたが、
「本醸造酒」のすっきりした飲み口も美味しいなと感じて、
いろいろ飲むようになりました。
好きな蔵の地元向けの普通酒が、違う銘柄だと取り寄せたりして、
晩酌向けにいいものを探したりします。
こういった分類は、日本酒の選び目安であって、
醸造蔵によって、美味しかったり、自分に合わなかったり。
お店の保存状態にもよりますし、
開栓したばかりの口開け酒は美味しく感じます。
先入観だけで、飲まず嫌いにならず、
もしかするとそのお酒とは一期一会かもしれません。
自分の趣味と合うか確かめるのも楽しいですよ。
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